フラグメンツ

オリジナル小説とイラスト。 不器用な生き方しか出来ないものたちの魂の救済。

目次

ようこそ。

『フラグメンツ』へお越しくださいましてありがとうございます。

ここは『目次』ページとなっております。

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『prologue』から続きに飛べるようになっておりますので
初めてお読みになられる方は『prologue』からどうぞ。
(『○○に続く...』の部分をクリックしてください。)
『★』印のものが現在不定期連載中のもの。
現在小説を2編更新中

★浮遊する灰色       ★やまない雨           ★網膜の追憶         
現在更新中。         降りしきる雨            イラストブログです。
或る少年の苦悩。      彼らの過去と現在と未来    ギャラリー移転しました。
                                     こちらはほぼ毎日更新しています。
◆purologue          ■prologue
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◆2              ■2
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              ■8(9/27up)           
◆10
(9/4up)






■網膜の裏側

喫茶店で起った素敵な出来事。

◆purologue
◆?
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◆?
◆?
◆epilogue



■天使のみつけかた

こちらはショートストーリーなので1篇のみ。


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天使のみつけかた


マンションの屋上。
給水塔の上。
その縁に立って、両手を広げ、空を見上げる。

空は高くて遠い。
濃い青。静かに流れる雲。

目を瞑る。

ぼくは今日もひとりだ。

靴を脱いでひざを抱えて座る。
裸足の足の裏がひんやりとして心地よい。
それに反してぽかぽかとした日差し。

どこかからピアノを弾く音が聴こえる。
その拙い演奏にも心が和む。

仰向けになって空を見上げる。

飛行機雲が空を二つに分ける。

今日は天使がひとり。









…いつの間にか眠っていたらしい。
日は翳り、ちょっと肌寒い。

「起きた?」

まだ少し寝ぼけたまま首を右に向けて隣を見ると、真っ黒な長い髪の少女が隣に座っている。顔は影になっていてよく見えない。
でもたぶん知らない子だと思う。この声に聞き覚えはない。
…いつの間に?
 ここはぼくだけの特等席のはずなのに。
それ以前に屋上の鍵をどうやって開けて入ってきたのだろう。
ぼくは抜け道を知っているのだけど。少女も見つけたのだろうか。

「うん…。」
ぼくはなんと言っていいかわからずにとりあえずそれだけを言って体を起こす。

「こんなところで寝ていると風邪をひくよ?」
「うん…。そうだね。」
眼が辺りの暗さに慣れてきたようで少女の顔が見えてきた。
やはり見たことのない顔だ。やけに肌の色が白い。瞳が大きくて黒い。

「ここ、私もまたきてもいいかな?」
少女は遠くを見ている。家の明かりが点々と灯って足元に星が落ちているよう。

「ここはぼくのものじゃないから。」
「ううん。ここはあなたのものだよ。私は、ここであなたの隣にまた座りたいなって思ったの。」

「どうして?」
少女は少し考えるように首をかしげる。
「なんだか安心する。どうしてだろう。ひとりだけどひとりじゃないような気がしたの。」
「ひとりなのがいやなの?」
「ううん。ひとりでいたいって思ってる。でも時々淋しくなるんだ。
 だからひとりでいる人の隣に座りたいって思うときがあるの。」
少女がこちらをみて儚げにほほえむ。
「ふぅん?べつにかまわないけど」
…本当はちょっと嫌だけど。
「じゃあ、私もう行くね。ごめんね。ありがとう。」
少女は立ち上がってスカートの埃を払うと給水塔の脇についたはしごを降りていく。
かわいい顔をしていたけど、変わった子であることは確かだよな。
『ひとりでいる人の隣に座りたい』…か。
それはちょっとわかるかもしれない。
ぼくもたまに淋しくなる時はある。でも誰かと馴れ合ってまで一緒に居たいとは思わないからいつもひとりでいることを選んでいるのだけど。




また給水塔の上に来ている。
今日は雲が多い。
こんな日は雲のかたちを眺める。

あ。あの雲は天使みたいだな。

「こんにちは。」
後ろから声を掛けられる。
振り向くとこの前の少女が微笑みながら立っていた。

「うん。」
それだけ言うと、また雲の観察に戻る。

少女はぼくと少し間を空けた隣の縁に座って足をぶらぶらさせている。

「あの雲、天使みたいだね。」
こちらを見ずに言う。僕とおんなじこと思ってる。

「そうだね。」

それからはお互いに何も言わずにただ座っていた。
確かにこんなのも悪くない。
ひとりとひとり。
静かに流れる時間。
そんな風にただ同じ空間に佇んでいる時間を共有することが半年ほど続いた。
別に毎日というわけではないけど、1週間に1度くらいの割合で。
毎回というわけではないし、ぼくが先に来ているときもあれば、少女が先に来ていることもあった。お互いの名前は知らないままだったし、知ろうともしなかった。

ある日、いつものように給水塔に登ると一枚の紙が貼り付けてあった。
風に揺れていた。

その紙にはこんなことが書いてあった。

『ありがとう。またどこかで偶然にお会いしましょう。』


『偶然にお会いしましょう』というのがなんだかあの少女らしくてすこし暖かい気持ちになる。
ポケットにその紙をしまってまた空を眺める。




あれから5年たつ。
ぼくはあの後すぐにあのマンションから引っ越してしまったのであの給水塔の上にも行くことはなくなってしまった。

机の引き出しの奥にはまだあの紙がしまってある。
何かすごく落ち込むことがあるとその紙を取り出して眺めるのがくせになってしまった。
きっとあの少女もぼくみたいにひとりでいるのかなと思うとすこし心が落ち着くのだ。
結局今日まで少女に『偶然に』会うことはないけれど、気付くと少女の姿を探している。駅のホームで電車を待ちながら。道行く人々を眺めながら。
空を見上げて。

彼女もこの空を見ているのだろうか。ぼくを覚えているだろうか。
いや、覚えていなくてもかまわない。

また雲を眺めて『天使』を見つけたりしているだろうか。
今日は二人、天使を見つけた。




「あの雲、天使みたいだね。」
後ろから声。

「そうだね。」

ぼくは振り返る。


ひとりとひとり。







ぼくたちの物語が

はじまる。
20070508225732.jpg

網膜の裏側 ◆Prologue◆

◆Prologue◆

夢を叶えたはずだった

しかし 
いつからだろう

あの頃 あんなにも輝いて色鮮やかだった世界は色褪せ 鈍色に

ねぇ あの頃の私

今も 私は そこにいるのだろうか?



                                              ◆ ?に続く...

網膜の裏側  ◆ ?

◆ ? ◆

携帯電話の着信音で目を覚ます。
私はメロディの着信音にどうにも違和感があるため、電子音のものを使っている。
携帯電話のディスプレイを見ると友からのメールの着信を知らせている。
メールは読まずにとりあえずソファから身を起こす。
外はすっかり明るい。
時計の針は十時半を指している。
頭が重い。
どうやら、また呑みすぎたようだ。ソファの脇のテーブルにはチューハイの缶とワインのボトルが並んでおり、灰皿にはタバコが溢れ出しそうになっている。
喉もいがらっぽい。酒を呑みすぎただけでなく、タバコも吸いすぎたようだ。
昨日は映画を見ながら呑んでいたが、どこまで見たのかもう覚えていない。
もう一度見なくては。

とりあえず目を覚ますために珈琲を飲もうと、お湯を沸かしにキッチンへ行く。
キッチンのシンクには昨日の夕飯で使った食器類が放置してある。
ひとつ溜息。
お湯を沸かしている間に先ほど届いていたメールを確認。
今日会う約束をしていた友達からのキャンセルの連絡だった。
ああ、そういえば約束していたか。
…忘れていた。
どうにも最近記憶力が低下しているのか、そういった約束事をすぐに忘れてしまう。
記憶力というよりも、人との関係を保つことに対する執着心が薄れているのか。
約束自体を忘れていたことなんかおくびにも出さずにさも人のよさそうな返信をする。

いいんだ、もう。どうでもいい。
最近、人に会うのが面倒で仕方がない。我ながら最低だとは思うが。

珈琲の香ばしい香りに包まれながらソファで音楽を聴く。
外は厭になるくらいのよい天気だ。

仕方がないから、散歩にでも行くか。

                                           ◆◆ ?に続く...

網膜の裏側 ◆◆ ?

◆◆ ? ◆◆


家の近くの並木道を歩く。
私の散歩コースは決まっている。この並木道を歩き、喫茶店でご飯を食べ、ゆっくりしてから帰るというものだ。特に予定のない休日はいつもこのコースだ。

葉が青い。空気にも色がついているようだ。
ニコチンでどす黒くなっているはずの肺に清浄な空気を取り込む。
気休めにもなりはしないが。
並木道を少し歩き、脇の小道に入ったところにその喫茶店はある。

住宅街の中に作られた並木道なので、周りはぐるりと住宅で囲まれている。
しかも高い塀で囲んでいる家が多いためにすぐ近くまで来ないとその喫茶店は目に入らない。
知らない人から見ればその喫茶店は、変わった建物と思われるだけで、喫茶店とは認識されないだろう。
そもそも、どうやらこの建物は知らない人間には認識されにくいようだ。
ごく近所に住む人間でも知らない人間が多いのではないだろうか。
私が初めてこの喫茶店を見掛けた時は、何故かひどく心惹きつけられ、辺りを不審者よろしくうろうろしていたものだが。
まぁ、その時はこの建物が喫茶店だとはわからなかったわけだが。

白塗りの壁の直方体。足元だけが外から見える低い位置に小窓が並んでいる。
小道から右奥に回ったところに何の装飾もない濃い茶色のドアがあり、そのドアの右脇に吊るしてある月を模したランプに明かりがともっていれば営業中である。
看板もないのだ。初めて入るにはとても勇気のいる喫茶店である。

「こんにちは。」
ドアを開けて中に入ると声をかけられる。
軽く会釈していつもの席へ。店の奥の窓際の席が私の定位置。
私以外の客はいない。店の席が埋まっているところを見たことがない。
私以外の客がいるときでも一人か二人程度。ひとりで来ている客しか見たことがない。
少し、この店の経営状態が心配になったりしないこともない。
しかし、集客力のなさはこの店のつくりを見れば明らかだろう。
口コミでしか客を集めることは出来ないのではないだろうか。
だが、この店の存在を知人に教えたことはない。
私だけの隠れ家にしたい、と思わせるのだ。

足元の小窓からしか外の光は入ってこず、照明も間接照明しかないので真昼間でも店内は薄暗い。
低く流れるジャズ。壁の白と、フローリングの年月を感じられる濃い茶色のコントラストがセンスの良さを窺わせる。木製のテーブルと椅子も床と合わせて大事に使い込まれてきた濃い茶色のものだ。この店自体はそれほど古いものではないが、長い年月を越えてきた机や椅子というのは心落ち着く。
ここだけは、いつもの忙しない日常と離れ、ゆっくりと時を刻んでいるようで、安心するのだ。

席について落ち着いたところでテーブルにコップが置かれる。
私は彼を見上げる。
今日はハーブティーのようだ。
この店のマスターであるのであろう彼は薄く微笑む。
年齢は20代後半くらいだろうか。もっと上のような気がするときもあるし、下のような気がすることもある。でも私は人の年齢を大きく外したことはないのでたぶん合っているだろう。私と同じくらいの年代であろうのに、こんな風に自分の店を持つというのは凄いことだ。
客はあんまり入ってないが。
彼は長身で、いつも黒い服を着ている。黒い服がこの店のユニフォームなのかもしれない。
男性にしては少し長めの黒髪。長い睫毛に縁どられた色素の薄い、茶色の瞳が印象的だ。
常に穏やかに微笑んでいる。
名前は「ナツメ」というらしい。他の客が呼んでいたのを聞いたことがある。

この店では注文する前に飲み物を出される。
しかもその時の私にぴったりあった飲み物。コーヒーの時もあれば紅茶の時もあり、今日のようにハーブティーの時もある。
最初の頃は不思議で仕方なく、またここ以外で飲むハーブティーには苦手なものが多かったため、躊躇することもあったが、不味いものが出されることはなかったため、今では出されたものを素直に飲むようになってしまった。
ハーブティーということは、やはり私は疲れているらしい。
「今日は何のハーブティーなんですか?」
ここで飲むハーブティーがいつもおいしいため、どんなものなのか毎回聞くようにしているのだが、ハーブティー専門店で買ったものを自分で淹れてみても失敗してばかり。なかなかおいしいものを淹れることが出来ない。
ナツメは薄く微笑む。
「お疲れのご様子でしたので、ハイビスカスと、カモミール、ローズヒップなどをブレンドしてみました。アカシアのハチミツも少したらしてあります。」
私の拙いハーブティー知識を掘り起こす。
「二日酔いってばれました?」
「ええ、ばれました。」
ナツメはいたずらっぽく口の端をあげる。

その赤く色づいたハーブティーをゆっくりと一口飲む。
やはりおいしい。ほっとする。体の芯からあたたまる。
ひとつ溜息をつく。
「おいしいです。」
ナツメは微笑んだまま。それが当然というような顔で。でも厭味はない表情。
「今日のメニューは?」
この店では決まったメニューがない。その日その日で違うメニューだ。客によっても変えているようだ。
そのため、いつも口頭でメニューを教えてもらう。
もしかしたら、客と言葉を交わすためにそうしているのかもしれない。
ここに来るまで、友達でもない他人と言葉を交わすことがこんなにも心安らぐものだとは思わなかったものだ。


「そうですね。では、ミネストローネとほうれん草のショートパスタはいかがですか?」
「…はい。それでお願いします。」
これでは選択肢がないようだが、希望を言えば変えてくれる。
でもいままでに変えてもらったことはない。
ハーブティーと同じで、今の私に必要な栄養を考えてくれるのだ。
私の顔色を見て、言葉を交わすだけでどうしてそんなことがわかるのかはわからない。
普通なら気味悪く感じそうだが、ナツメにそういった感情を持ったことはない。

ナツメはいつでもそうであるようにそうなのだ。



食事が運ばれてくるまでの暫しの時間、ぼうっとする。
何も考えないでいられる時を持てるのはここくらいのものだ。

ドアが開く音がして、少年が入ってくる。
この少年は何度か見たことがある。
高校生くらいだろうか。身長は低く、華奢な体つきをしている。そのかわいらしく整った顔と相まって、一見女の子のようだ。事実、初めて見掛けた時は女の子と思ったものだ。
色素の薄い、ミルクティー色の髪の毛。大きな、グレーの瞳を持つ眼。白い肌。
今日の彼はいつもに増して色が白い。青ざめて入るように見える。
体調が悪いのだろうか?

彼は早歩きでキッチンの前に設けられたカウンター席に腰を下ろす。
そこで顔をテーブルに伏せる。細かく震えている。
本当に具合が悪そうだ。

声を掛けた方がよいかもしれないと考え、腰を浮かそうとしたところでナツメがキッチンから出てくる。
初めて見る表情だ。いつもの穏やかな微笑みは消え、顔面蒼白になって目を見開いている。
私の方をちらりと見る。
「ツキ、とりあえず奥に入れ。」
ナツメは少年に声をかけ、肩を少年の腕の下に入れて抱きかかえるようにキッチンの奥へと移動する。

突然の展開に、私はどうすればよいのかわからなくなる。

このまま帰った方がよいのだろうか…?

                                                ◆◆◆ ?に続く...

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